イヌジニンー犬神人ー 室井大資 コミック怪 角川書店 2008 580円

退魔ものはオカルト、超能力バトル、エロス、強烈な感情や怨念などの要素がミックスされ、配合具合で無数のバリエーションが生まれるのですが
最近はセーラ服現役女子高生が日本刀で戦う…的なものばかりが目についていい加減飽きていました。
いや、セーラ服日本刀は大好きですけど。


本作の主人公は目つきが悪くてぶっきらぼうな男。組織の実戦部隊で「手」と呼ばれています。
能力を持たない一般構成員は現場周辺をブルーシートで覆ったり警察消防に根回ししたり、現場周辺の伝承を調査する図書館部隊など、役所的な組織です。
物語は淡々と事件の因縁を解くほぐしていく刑事もののような展開で…とても地味。
その、ただひたすら現地調査と史跡伝承あさりをするスーツ姿のいかめしいおっさんの汗だくな姿が、彼らのプロフェッショナルぶりを浮き彫りにしていきます。


実働部隊には手である主人公のほかにも目、口、耳と呼ばれる専門家がおり、
目が怪異を認識、耳が分析、口が指示して手が攻撃する…という連携で初めて一体の怪異と相対するため、一番の見せ場である戦闘ですら地味。派手な妖怪バトルを期待していると肩すかしくらいますが、その地味さがあとでじわじわと効いてきて読むものを曖昧な境界に引きこんんでいきます。
しかし、悪酔いするかといえばそうでもなく、最後は主人公の強烈な念力で現実に引き戻されるという力技と一話完結形式のおかげで手軽に読め、気分転換にちょうどいいボリュームとなっています。
組織と関わってしまい、回を重ねる度に非常識な世界になじんでいく関係者の変貌ぶりも楽しみの一つです


呪街 アフタヌーンKC 惣本 蒼
念力ホラーものとしては、こちらもおすすめ。ここ一年ぐらいアフタヌーン読んでないので続きが気になります。
狂気に当てられて、人間でいられなくなった人物の歪んだ顔が作風とマッチしておりとても気味悪いです(褒め言葉)
この苦悶や狂気に満ちた顔ってのが難物で、可愛い笑顔の美少女を描く何倍も難しく、悪意の具現化を妖怪などとといった形に具現化せずに表情だけで「人外」を描ける顔芸はホラー作家のキモですね。とてもイイ顔してます。